AI活用支援・業務効率化

社労士法人でAI導入を進めた際に現場で起きた3つの誤算──社労士法人への導入を支援した現場から

社労士法人でAI導入を進めた際に現場で起きた3つの誤算──社労士法人への導入を支援した現場から

「AIを入れたのに、思ったほど使われていない」。生成AIを業務に使う企業が増える一方で、個人情報を多く扱う士業事務所では、AI導入に慎重な声も少なくありません。

アオキマネジメントオフィス(AMO)は、グループの社会保険労務士法人AokiでAI導入を支援してきました。その現場で起きたのは、AIの性能ではなく「環境」「使い方」「定着」にまつわる誤算です。

誤算①環境誤算②使い方誤算③定着丸を押すと、それぞれの解説へ移動します

この記事では3つの誤算をもとに、導入前に確認したい判断のポイントを整理します。

この記事でわかる「3つの誤算」① 保存先との相性:使い始めて初めて、連携の不具合が分かった② 利用枠の上限:深く考えるAIを何にでも使い、すぐ上限に達した③ 定着の壁:入れただけでは「調べ物の道具」で止まった→ どれも原因は「AIの性能」ではありませんでした。

AIを使う企業は増えた。それでも士業が慎重になる理由

生成AIは「使うのが当たり前」の段階へ

総務省の『令和8年版 情報通信白書』によると、自社のAI活用方針を把握している回答者のうち86.4%が、何らかの業務で生成AIを使っていると答えています。使い道で最も多いのは議事録やメール作成の補助で、約7割にのぼります。

出典:総務省「令和8年版 情報通信白書(生成AIの業務利用状況)」

文章の下書きや要約など、手軽な使い方から広がっていることが分かります。

士業は「入れれば終わり」にならない

ただ、士業事務所は事情が少し違います。扱うのは、従業員の氏名や給与、家族構成といった情報です。答えの正確さも強く求められます。

そのため「便利そうだから入れてみる」だけでは、現場は動きません。実際にグループの社労士法人で導入を進めると、事前には想定していなかった誤算がいくつも出てきました。

AI導入を「何から」進めるべきか迷っている段階でしたら、
いまの状況を整理するところからでも、アオキマネジメントオフィス(AMO)にご相談いただけます。

まずは無料で相談してみる

誤算① 保存先との相性が、使い始めて初めて分かった

調べ物には便利でも、業務の流れに乗らない

グループの社労士法人は、Microsoft中心の環境でファイルを管理しています。導入当初は、Google系のAIを中心に使い始めました。

調べ物には十分役立ちました。ところが、社内に保存してある資料と組み合わせて使おうとすると、連携がうまくいきません。結果として、社内には広がりませんでした。

「選び直す」より「使って確かめ、すぐ直す」

そこで、保存先の環境と相性のよい、社内向けのAIチャットに切り替えました。今は、調べ物はGoogle系のAI、社内での共有は社内向けAIチャット、と役割を分けています。

AIが使われるかどうかは、単体の性能よりも「いま使っている仕組みとつながるか」で決まります。これは資料を読むだけでは見えにくく、実際に使って確かめて初めて分かる点です。

この誤算のポイント原因:ツールと保存先の環境が合っていなかった
学び:AIは「性能」より「今の仕組みとの相性」で選ぶ

誤算② 利用枠があっという間に上限に達した

一番「深く考える」AIを、何にでも使ってしまう

2つ目の誤算は、利用枠です。
AIには、すばやく答えるものから、時間をかけて深く考えるものまで、いくつか種類があります。深く考えるAIほど、多くの利用枠を使います。

グループの社労士法人で使い始めたところ、一番深く考えるAIで、スライドを丸ごと作り直すといった重い使い方をする人が出てきました。その結果、利用枠がすぐに上限に達しました。今は管理者側で制限をかけ、作業に応じてAIを使い分けています。

原因は「力の使い分け」を知らなかったこと

振り返ると、原因はAIの性能ではありませんでした。作業の重さに合わせて、AIの力を使い分けることが知られていなかったのです。

メールの言い回しを整える、短い文章を要約する。こうした軽い作業なら、すばやく答えるAIで十分です。それでも毎回一番深く考えるAIを使っていると、利用枠はどんどん減っていきます。そして、本当に深く考えてほしい資料づくりや分析の場面で「もう枠が残っていない」ということが起きてしまいます。

軽い作業には軽いAI、重い作業には深く考えるAI。この適材適所を知ってもらうために、使い始める前のちょっとした講座が必要だったのです。

総務省の『令和7年版 情報通信白書』でも、生成AI導入の懸念として日本で最も多かったのは「効果的な活用方法がわからない」でした(2024年度の調査)。「使い方が分からない」は、多くの企業に共通する壁といえます。

出典:総務省「令和7年版 情報通信白書(企業におけるAI利用の現状)」

この誤算のポイント原因:作業の重さに合わせてAIを使い分けることが知られていなかった
学び:使い始める前に「適材適所」を知る時間をつくる

誤算③ 入れただけでは、現場に定着しなかった

打ち合わせ用のテーブルで、4人がパソコンを囲み、AIの使い方を話し合っている様子

「調べ物の道具」で止まってしまう

3つ目は、定着です。
導入しても、多くの人は調べ物にしかAIを使いませんでした。

今のAIは、文章を作るだけではありません。たとえば「毎月同じ形式で作っている集計表」や「同じ手順をくり返している確認作業」に合わせて、その職場の業務に合わせた専用のアプリを作ることもできます。手作業で時間がかかっていた作業を、短い時間で終わらせる仕組みです。

しかし現場では、そもそも「AIでそんなことができる」とは思われていませんでした。できることを知らなければ、頼むこともできません。「使い方が分からない」という不満も出ていました。

横について教える人がいて、初めて広がる

そこで、AIに詳しい社員が、一人ずつ1時間ほど横について教える時間を設けました。教えるのは、AIごとの得意分野と、業務に合った使い方です。

今では、社員が「この作業を早くしたい」と相談すると、詳しい社員がその業務専用のアプリを作り、「毎月これでやればいい」と提案する流れも生まれています。社内の就業規則や賃金規程をAIに読み込ませたことで、総務への問い合わせが減るという変化も出てきました。

「AIを進める人材が足りない」は多くの企業の課題

IPA(情報処理推進機構)の『DX動向2026』では、AI導入・運用上の課題として「専門人材が不足している」が50.1%で最も高くなっています。AIを進める人材の不足は、多くの企業に共通する壁です。グループの社労士法人でも、定着のきっかけになったのは、横について教える人の存在でした。

出典:IPA(情報処理推進機構)「DX動向2026」

この誤算のポイント原因:AIで「何ができるか」が現場に伝わっていなかった
学び:定着には、横について教え、支える人が欠かせない

ツールを入れても定着しない理由は、DX全体にも共通します。

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士業ならではの「AIへの慎重さ」は、正しい感覚

「有料だから安全」ではない

士業事務所がAIに慎重になるのは、当然のことです。総務省の『令和8年版 情報通信白書』でも、日本で最も多い懸念は「社内情報の漏洩などのセキュリティリスク」でした。

出典:総務省「令和8年版 情報通信白書(懸念されるリスク及びリスク対策のための取組状況)」

個人情報保護委員会も注意を呼びかけています。本人の同意なく個人データを生成AIに入力し、そのデータが応答以外の目的で使われた場合、個人情報保護法に違反する可能性があるとしています。そのため、入力したデータが学習などに使われないかを、十分に確認するよう求めています。

出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(2023年6月2日)

グループの社労士法人では、会社として契約・管理しているAIに利用を限っています。ただし、料金を払っていれば安全、というわけではありません。大切なのは、入力した情報がAIの学習に使われない設定になっているか、外部に出ない仕組みがあるかを確かめたうえで選ぶことです。

そのうえで、仕組みを知らないまま無料のサービスに業務の情報を入れる人が出ないよう、社員への教育も欠かせません。さらに、業務のどこかでAIを使うのであれば、そのことを契約書に書くべきだと考えています。

最後に判断するのは、人

スーツ姿の人がペンを手に、書類の内容を確認している様子

AIは道具です。
簡単な労務の質問なら、AIでも答えられる時代になりました。しかし、責任のある判断は専門家が行います。この線引きは、これからも変わりません。

AIに使われるのではなく、人がAIを使う。これが、士業がAIを導入するうえで最も大切な前提です。

導入前に確認したい3つのこと

「何をしたいか」が先、「どのツールか」は後

ここまでの誤算の多くは、目的よりも先にツールが決まっていたことで起きやすくなります。導入前に、まず次の3点を確認してください。

  • 何をしたいのか:どの業務の、どんな手間を減らしたいのか
  • 現場の声を聞いたか:実際に使う人が、何に困っているのか
  • 導入後に支える人がいるか:横について教え、相談に乗れる人がいるか

AIは「選ぶ人」で結果が変わる

AIはできることの幅が広いため、「この悩みなら、この組み合わせ」と選ぶ目が欠かせません。目的に合わせてAIを選び、組み合わせる担当者がいるかどうかで、導入の結果は大きく変わります。

また、業務のやり方が特定の人に頼ったままだと、AIを入れても効果は出にくくなります。業務の整理から始める考え方は、こちらの記事で紹介しています。

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まとめ:AI導入の正解は、事務所ごとに違う

3つの誤算は、どれもAIの性能の問題ではありませんでした。
「環境との相性」「使い方の理解」「教える人」の問題です。

そして、どの事務所にも同じ答えが当てはまるわけではありません。使っている環境も、扱う業務も、社員の慣れ方も、事務所ごとに違うからです。ある事務所でうまくいった方法が、別の事務所では逆効果になることもあります。

CHECKひとつでも当てはまれば、見直しのサインです少し手を止めて、自分の事務所に当てはめてみてください。☐ AIを導入したが、調べ物以外にほとんど使われていない☐ 使ってよいAIの範囲や、利用のルールが決まっていない☐ 入力した情報が学習に使われない設定か、確かめていない☐ 社内に、使い方を教えられる人がいない☐ 契約書や社内規程に、AIの扱いが書かれていない

アオキマネジメントオフィス(AMO)では、グループの社労士法人での導入経験をもとに、士業事務所のAI活用を内側から支援しています。
何から手をつければよいか整理したい──そう感じた段階で、気軽に声をかけてください。

AI導入の「入れて終わり」を防ぎたいならツールの選び方や現場への定着は、進め方次第で成果が大きく変わります。
いまの状況を整理するところからでも、お気軽にご相談ください。
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